光文社古典新訳文庫 闇の奥 ジョゼフ・コンラッド

夏休みだが、どこにも出かける予定がなく、外は暑いので出歩くのも嫌で、一日中クーラーを使うと電気代がとんでもないことになるので、ショッピングセンターに行って、涼みながらウィンドウショッピングをした。

ショッピングセンター内の書店を何の気なく歩いていると、中央の目立つテーブルに夏のブックフェアというのをやっていて、漫然と眺めていると、赤線だけの抽象的人物像(?)のカバーと「闇の奥」という書名が目に入った。

映画「地獄の黙示録」の原案小説だということで、ずっと昔から知っていたが、特に興味もなく読まずにきた。薄めの本で、分量がさほど多くなく、いつかは読むはずだろうと思って、買った。
–光文社古典新訳文庫 闇の奥 ジョゼフ・コンラッド

作者のジョゼフ・コンラッドは、海洋冒険小説(ジュール・ベルヌ?)に影響を受けたらしく、船員となってアフリカのコンゴで仕事をした経験もあって、見渡す限りジャングルの大河を船で奥地へと入っていく雰囲気が迫真の描写で迫ってきた。
しかし、この小説に対してよくある評価の、ヨーロッパの植民地主義の文脈で読んでしまうのは違う気がした。作者は単純に、経験を基にした冒険小説を書いたのだと思う。それが、分かり易い結末らしい結末がないこと、そして、主人公の落ち着いた思考と語りによって、単なる娯楽小説ではない、普遍性を持った小説となり、百年以上経っても古びず、「地獄の黙示録」や多くの小説に影響を与えているのだと思った。

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