NHKの番組を見ていたら、偶然「ミッドサマー」というホラー映画の紹介をしていた。ホラー映画なのに、白昼のように目映い野外で花飾りをした女性達が笑顔で大勢立ち並んでいる映像が流れ、血も流れないし怪物も出ないし、どこをみてもホラー映画に思えなかった。
後でネットで調べてみると、北欧の白夜の夜のお祭りの場面だったらしい。しかも、R15+で現在(2020/3/12)上映中なのだが、東京などでは大好評で、ディレクターズカット版という、ボカシなしで、さらに二十分長い作品が、2020/3/13から普通版と並行してTOHO系列の映画館で全国上映される。これは驚くべきことだ。ディレクターズカット版は普通版が上映終了したずっと後になって、DVDなどで発売されるのが当たり前だと思っていた。通常版が絶賛上映中に、ディレクターズカット版が並行して上映するのは快挙だろう。これは見に行くしかないと思った。さらにディレクターズカット版だとR18にグレードアップ(?)するとのこと。ポ〇ノ並みのインパクトだ。
–映画「ミッドサマー」 DVD,Blue-Rayは「ボカシなし」
残念ながら、私の町の映画館ではディレクターズカット版の上映はなく、隣の県まで新幹線に乗っていくしかないので、断念した。アリ・アスター監督は「ヘレディタリー/継承」という作品で長編デビューして注目されたとのこと。レンタルされているので、またいつか借りて視聴してみようと思う。
なぜか11:35という昼前の中途半端な時間からの上映だった。R15+のせいだろうか?館内は7人くらいの観客しかいなかったが、ぎりぎりの時間にセーラー服のJK二人が入ってきた。新型ウィルスのため休校じゃないかと思ったが、従ってない学校があるのか、それとも部活があったのだろうか?
映画の感想としては、時々思い出したように人が死んだり、血が流れたりして、はっとする場面はあるのだが、それが特に重みもなくさらっと流れていき、白夜の目映い光のなかでの奇妙な宗教儀式もおどろおどろしさより朗らかなユーモアさえ感じるくらいで、ずっと起伏らしい起伏もなく淡々とした場面が続いていくが、独特の浮遊感あるカメラワークの効果なのか、不思議な感覚があって、「スターウォーズ」と違って、最後まで退屈せずに見ることができた。「ほら、怖いでしょ。ここで怖がってください」というあざとい演出がなく、謎解きもされず、全身を水色や黄色の極彩色の花で飾られた主人公の女の子のカタルシスを感じさせる微笑みとともにエンディングを迎える。主人公の女の子の心象風景が現実とリンクして、現実の世界を動かしていたと解釈することもできる。
R15+だったが、局部のボカシ以外は全裸女性の胸もセックスシーンもあからさまで、太った全裸の中年女性が主人公の恋人の男の腰を後ろから手で押して手助けし、若いも年寄りも胸を隠さずセックスを応援(?)し、行為が終わった後、男の相手をしていた若い女性が嬉しげに「赤ちゃんを感じるわ」と言う場面は、よく映倫が通してくれたものだ。映画館にいたJK二人は居た堪れなかっただろう。
個人的に目を見張ったのが、架空の村の宗教儀式の独特さで、カルトっぽいが、馬鹿々々しくも見える踊りや動作が入り、もう一歩誇張してしまうとギャグになるという、ぎりぎりのラインのバランス感覚が絶妙だった。最後まで興奮も感動もしなかったが、全体を通してとても面白いと感じた。見る人を選ぶ映画であり、私はこういう変な映画は大好きだが、館内が明るくなる前に私以外誰もいなくなっていた。JK二人も知らないうちに、いなくなっていた。^_^;;
アリ・アスター監督は根っからのホラー好きらしいので、タイプは違うが、デビッド・リンチに匹敵する作品を作って欲しい。次回作を期待して待ちたい。